知らぬはオヤジばかりなり #002

ある土曜日の夜11時を過ぎ 

お座敷のお客様は、まだ席を立たれそうもないので、

気づかれないように、そろ~り そろ~り と、片付けはじめる。

  ガラガラガラ  入口が開く音がする。

シャンパンを持った腕しか見えない。  

アレ?

「玉ちゃん、飲もう~!」 お店の外から声がする。

「ァ!H.Kさん、なに隠れてるの?入っておいでよ」

    いつも粋な登場です

お話を聞くと、大阪を出て長女のいる広島の五日市に車を置いて

宝に来たという。

*H.Kさん 僕がまだお勤めの時代からのお客様です。*

「えー!明日 ケッ・コン・式」

2年前ぐらいから親子3人と新郎となる彼とよく宝に来ていた。

両端に彼とおやじが座り、間に娘とお母さんが座り、会話の橋渡し役、

お付き合いは、高校時代から長~い交際期間12年をへて、ゴールイン!

知らぬは「おやじ」ばかりなり 

僕   「ね~ね~ H.Kさん 今から泣く練習をしよう?」

H.Kさん「泣くか、泣かない、か、懸けるか?おっかあーに聞けばわかるから」

僕   「じゃー (泣く)ほうに100万円」

H.Kさん「だめだよー玉ちゃん、それじゃー勝負にならない」

僕   「やっぱり、泣くじゃん それでは、三種類の泣き方の練習!」 

     1.娘の手を取ってバージンロードをあるく時の泣き方。

     2.スライド写真を観せられた時の泣き方。

     3.最後に娘からの感謝の手紙を読まれた時の泣き方。

あっという間に時間が過ぎ、もう午前1時すぎ

うちで、こんなことをしてていいの?

12時間後にはH.Kさん、娘の手をひいているという

いつの日か孫に手を引かれデパートのおもちゃ売り場に連れていかれ

イタ~い目にあわされることH.Kさんは知らないでしょう。

追伸

『娘は妊娠三か月』知らぬはオヤジばかりなり。